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世の中には自己啓発本といったものが数多くある。
これらの著作は非常に素晴らしい出来だ。
今現在うまくいっていない人、今から10年後に薔薇色の人生を送りたい人からすると、自己啓発書の類は光り輝く天啓の書に見える。
有名著作は数あれど、その中でもデール=カーネギー『人を動かす』、ナポレオンヒル『思考は現実化する』は二大巨頭であろう。
私も十代の学生の頃、父親の本棚にこれらの著作があったので読みました。
だが、これらの著作を読むたびに非常に前向きになると共に、どこか腑に落ちない思いも同時に出てきたものだ。読後はいつも「何かを言っているようで結局何も言っていない」様なむなしい気持ちに陥る。
まるで夏休みの夜店に行ったのに特に何も楽しみがなかったようなそんな虚しさ。
というのも読んでいく中で語られているのはひたすら、「目的にためには自分の自尊心を捨てて何を言われても相手が満足するように計らいなさい」という様な言うは易し行うは難し感、「目的のためには自分の価値観さえも捨てる必要がある」ような本末転倒感さ加減である。
我々がしたいのはそんなことではない。
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価値観を保ちつつ、目的達成を最大化させたいのだ。
そのため、凡百の自己啓発書を読むと読後感の虚しさを覚えざるを得ないのだ。
自己啓発書を読みそんな虚しさを抱く中で出会った本が正に『自助論』である。
「自助論」はいわゆる自己啓発書にもかかわらず、そのような虚しさを一切催させない類稀な自己啓発書である。
それもそのはずである、実を隠そう自助論こそが自己啓発書の原点なのだ。
自助論とはイギリスの作家サミュエルスマイルズにより18世紀に著され、日本には明治初頭に中村正直により「西国立志編」として紹介された。
福沢諭吉の「学問のすゝめ」とともに当時大ベストセラーを記録し、近代日本の若者に多くの指針を与えた。
この本には、数多くの自己啓発書に書かれている様な小手先のhow toは書かれてはいない。
本書冒頭のHeaven helps those who help themselves.(天は自ら助くる者を助く)から始まる「自助の精神」の必要性を、過去の偉人のエピソードをうなるほど紹介して訴えかけてくる。
それらのエピソードを読むだけでも面白い。
また豆知識も豊富である。
例えば、地動説でおなじみのコペルニクスは元々パン屋のせがれだった話と言うトリビアや、ニュートンの飼い犬がニュートンの貴重な書類をかなりの量ゴミにしてしまった話、『フランス革命』を著したトマス・カーライルがようやく完成させた原稿を知り合いの召使に間違えて暖炉に放り込まれてしまった話などのトホホ話もたくさんある。
ちなみにカーライルはその後、一生懸命内容を思い出しながら改めて『フランス革命』を書き直したとのこと…。
様々な偉人のエピソードをシャワーのように浴びることで、文字を通じて頭だけでなく身体にまで理解が及ぶ。
自転車の知識と同じように体で覚えることができるのだ。
自己啓発書は多くの人を惹きつける。
これは人生のどこかで経験する、ある意味麻疹のようなものなのかも現象なのかもしれない。
だからこそどうせ麻疹を経験するなら、原点にして頂点である『自助論』の世界に埋没しよう。
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